宇宙意識への目覚め

 

 世界の紛争現場で長年「平和建設」活動に携わってきたアメリカ人女性ルイーズ・ダイヤモンドは、その著『平和への勇気──家庭から始まる平和建設への道』 の中で、次のように述べています。

 私は、人類がある特定の進化周期の終点に達し、別の周期に入ったと信じています。これがたまたま新しいミレニアムの始まりと一致しており、必然的に大変動と混乱の時期を伴うということは、私にとって完全に意味をなすのです。

 私たちは何世紀もの間、還元主義の知的・体系的世界観のなかで生きてきました。宇宙をその構成部分へと還元し、その働きを機械論的に理解しようと努めるその世界観は、当然ながら直線的で、合理的で、問題志向的思考様式を、また社会的関係においては、区画化された、分離的な、支配型のアプローチを偏愛します。

 率直に言えば、この世界観、およびそれを維持し促進するために確立されたすべての制度は、そのサイクルの最期を迎えたのです。現実の性質または自然法則と調和していない生き方を押し付けようとするこの世界観は、それ自体の消滅の種子を常に内包し続けてきたのであり、そしてそれらの種子が今熟したのです。

 一方、新たなサイクル、私たちが一体であるという認識から生ずるサイクルが始まりつつあります。関係的で、直感的で、機会志向的思考様式を、また社会的関係に対するコミュニティ志向的、相互結合的、パートナーシップ型のアプローチを良しとするこの新しいあり方は、私たちにとって明らかになりつつある普遍的な真実についての理解の上に築かれています。すなわち、私たちは事物を最小の物質片に還元することはできない。物質は意味と動きを持ったエネルギーである。生命は静止してはいない。それは流れである。私たちはばらばらではない。私たちは全体である。もし私たちが他人を虐げれば、私たちは自分を虐げる、という。

 この世界の真にホリスティックな性質をますます多くの人々が認識するにつれて、地球上のあちこちで広範囲にわたる意識の転換が起こりつつあります。市民権運動、女性運動、ますます高まる環境意識、東洋や先住民哲学への関心、主流になりつつあるホリスティックな医学的アプローチ、職場での個人参加型チームワークおよび士気の役割への注目、新しい物理学など、様々な仕方で表れているこの意識の変容は、21世紀からさらにその先へと私たちを導く新しい波なのです。

 古いシステムが崩壊し、消え去ろうとしている今まさに、私たちのうちの先駆者たちが、私たちは一体であるという真実を尊重する、新たな生き方と力の合わせ方を創り出しつつあります。私はたまたま、平和建設はこの波の最前部にあり、その先駆者たちは新しい時代の最も偉大な闘士であり擁護者であり、今後もそうあり続けるだろうと信じています。

 そしてこの潮流の中で、女性が重要な役を果たしているというのは、人間精神の荒廃を招いてきた「左脳一辺倒」の計算的思考に基づいた生き方を是正するために「右脳」を活性化することが急務となりつつあることと考え合わせて、きわめて注目すべきことだと思います。

 

来るべき人類

 意識進化に関する先駆的な研究書『宇宙意識』(1901年)中のウオルト・ホイットマンについての章に、人類の未来についての、ある予言的な言葉があります。それによると、ある日ホイットマンは著者のバックに次のように言ったそうです。「結局、どんな特別な自然の風景も──つまりアルプスもナイヤガラも、ヨセミテも、その他の何でも、ごく普通の日没や日の出、天と地、平凡な樹や草などより壮大でも美麗でもない──これが大きな教訓ですね。」これに対してバックは次のように述べています。「もし適切に理解されれば、この言葉は彼の制作と生涯との中心的な教えを示唆するものと私は信ずる──すなわち、通常のものこそはすべてを通じての最も壮大なるものであること、いかなる方面でも例外的なものは通常のものよりも立派でも善くも美しくもないこと、そして、真に欠けていることは、我々が我々の現在もたぬものをもつことではなく、我々のすべてがもっているものを見るために我々の眼を、感じるために我々の心を、開いておくことである、ということである。」そしてバックは、ホイットマンの次の言葉を「来るべき人類を予言するもののように思われる」として紹介しています。

 適切に生れ、育てられ、屋内、屋外を問わず、調和と活動性とを有する正しい状態において生長した民族は、たぶん、それらの状態から、またそれらの状態のなかで、単に生きることだけで十分であると知るであろう──そしてかれらの空、空気、水、樹木、その他との関係において、また無数のありふれた出来事との関係において、また「生」の事実そのものにおいて幸福を発見し、達成するであろう──それは夜となく昼となく健全な陶酔にみたされた「実在」とともにある幸福であり、その陶酔は、富、娯楽が与えうる悦楽のみならず、喜ばしき知性、学識、あるいは芸術の感性が与えうるあらゆる悦楽をも超えたものである。

 これこそはまさに「生のアーティスト」であるクリシュナムルティが実現し、その中で終生生き続けた境地であり、もしホイットマンがクリシュナムルティに会っていたら、あるいは彼の著作を読んでいたら、間違いなく彼を「新しい人類」の一人として認めたことでしょう。なぜならクリシュナムルティもまた、私たちに己の「生」を愛せよと命じているからです。そしてそれこそが、初期トークにおいてだけでなく、晩年に至るまで、彼が一貫して私たちに訴え続けたことなのです。それは、彼が若い頃に書いた詩の中に生き生きと脈打っています。

 

「不滅の友」

「汝」の眼の中に
旋風が
微風が
聖なるヒマヴァットが
平原が
幸福の谷が
そして青空が──
あらゆるものが「汝」の中にある

Krishnamurti

 

「生の詩」

千の視野を持つ千の眼
千の愛を持つ千の心
それが私だ

清き川も濁った川も
受け入れ
頓着しない海のように
そのように私はある

山間の湖は深く
泉の水は澄んでいる
そしてわが愛は事物の隠れた源泉だ

ああ、ここへ来てわが愛を味わえ
そうすれば、涼しい黄昏時に
蓮が誕生するように
君は自身の心の秘密の願望を見つけるだろう

ジャスミンの香りが夜気に充満し
深い森の奥から
過ぎ行く日の叫びが届く

わが愛する「生」は
重荷を下ろして軽やかだ
それを達成することが究極の自由だ

*

「生」を愛せ
そうすれば汝の愛はいかなる腐敗も知ることはないであろう
「生」を愛せ
そうすれば汝の判断は汝を支持するであろう
「生」を愛せ
そうすれば汝は理解の正道を踏み外すことはないであろう

Krishnamurti

 

究極の自由。絶対的自由。
汝の生そのものを愛せよ。

 

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Radha Chihiro
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