動物性食品が引き起こす環境問題

 

地球の陸地の1/4を利用

 地球上で、最も土地を使用しているのは工業型畜産であり、森林破壊の主要な原因です。

 お肉の生産は地球の陸地の26%、なんと1/4を利用しています。2050年に98億人の食糧を確保するには、2010年比で56%多くの食糧を生産しなくてはなりません。

 現在のペースで、肉や乳製品の消費が進んだ場合、インドの国土の2倍に当たる森林を畑にする必要があると言われています。すでに野生動物たちの多くが生息地を破壊され、未来が脅かされている中でこれ以上の森林破壊は破滅的と言えます。

 動物性食材の生産量を減少させ、家畜のエサとなる穀物の大量生産や動物の飼育のために開拓された土地は保全していく必要があります。

 

森林伐採

 1980年から2000年にかけて約1億ヘクタールの熱帯雨林が失われ、その多くが牛の放牧や家畜の飼料などのためのプランテーションによるものでした。

 森林は炭素を吸収し蓄える役割があり、気候変動を止めるために、これ以上の森林破壊は非常に危険です。

 

穀物の大量使用

 1kgのステーキの生産には、25kgの穀物が必要です。

 大量の穀物を必要とする畜産は、広大な農地の使用が必要となるため森林破壊や生態系破壊などの原因となります。

 お肉の代替品となる大豆製品も環境を大きく破壊しているのでは?と不安になりますよね。しかし、大豆の生産において人が消費しているのは10%以下で、なんと90%以上が家畜動物によって消費されています。

 

地球温暖化

 家畜から排出される温室効果ガスは、世界の温室効果ガスの約14%を占め、すべての乗り物から排出される温室効果ガスの総量に匹敵します。

 最近では、温室効果ガスの1/3は、「食」に関係しているという論文が発表されました。2000年11月の米国科学サイエンスに掲載された研究論文は、食糧システムからの温室効果ガス排出について何も対策を取らずに放置しておけば、それだけで、2050年までに気温上昇1.5℃を超えてしまうと発表しています。

 

水質汚染

 人間の食糧のために飼育されている動物は、人口の何倍もの排泄物を生み出します。

 米国環境保護庁(EPA)によると、米国の工場畜産場の動物は、毎年約5億トンの糞尿を排泄しています。動物の下水処理プラントがないため、ほとんどの場合、「ラグーン」と呼ばれるため池に保管されるか、畑に噴霧されます。

 また工業型畜産では、動物を屋内過密飼育するため大量の抗生物質やホルモン剤などを投与しており、薬で汚染された動物の大量の糞尿が水路から川や海を汚染していることも問題です。

 そして、家畜の飼料のために栽培された作物も、大量の化学肥料、除草剤、農薬などを使って生産されたものが多く、その多くは小川や川に流れ込み、水質を汚染しています。

 

大気汚染

 主要な死亡原因でもある大気汚染は、自動車や工場、発電所による汚染が原因と思われることが多いですが、米国では農業など食料生産で排出されるPM2.5による大気汚染で、年間約1万6000人が亡くなっている研究結果が米国科学アカデミー紀要に発表されました。そのうちの80%は、食肉、乳製品、卵など動物性食品の生産に関連していました。

 この論文によると、牛を育て、飼料となる作物を育てた大気汚染による早期死者数は年間で4,000人。これに豚と乳牛を加えると、死者数は、年間9,100人に増加しました。一方、食用トウモロコシを含む野菜の栽培による早期死亡は、年間100人でした。

 

土壌劣化

 世界の土壌の3分の1が何らかの劣化に直面している事実。

 家畜の飼育には大量の飼料が必要となるため、農薬や化学肥料を使用し単一栽培を行ってきました。化学肥料に偏ったことで、ある特定の栄養分が過剰になる、または不足している土壌が増えています。

 地球のバランスを保つ上で非常に重要となる窒素・リンの循環もすでに危険な臨界点を超えており、私たちの化学肥料の使用は、地球を安全に暮らせる場所に保つために、気候変動と並んで、今すぐに見直しが必要なものの一つです。

 化学肥料の使用は、土壌劣化だけではなく、酸素が乏しいために海洋生物が生息できないデッドゾーンを増やし、化学肥料からは気候変動を悪化させる亜酸化窒素などの温室効果ガスの排出、酸性雨、呼吸器系疾患、作物の収穫量減少の原因になります。

 

水の過剰使用

 食肉会社は、動物の飼料や生産から動物の屠殺や加工に至るまで、事業やサプライチェーン全体で水を使用しています。

 1kgのステーキを作るために、約15,000リットルの水が必要になります。

 

人獣共通感染症

 アメリカ疾病管理予防センター(CDC)は、新しく発生する感染症の3/4は動物からであるとしています。

 また、動物性たんぱく質の需要増加はパンデミックを増加させる大きな危険と世界保健機関(WHO)国連食糧農業機関(FAO)国際獣疫事務局(OIE)は警告しています。

 感染症の大きな原因の一つに森林伐採があります。肉の消費が増え、家畜とその飼料栽培のために森林面積が減り続け、動物間の接触が増加しています。動物の過密飼育も、感染症を引き起こす大きな理由の一つです。

 パンデミックの根本解決のためには、動物搾取や環境破壊のあり方を考える必要があります。

 環境(生態系)と生きものと人の健康は互いに関連しあう一体のものとするワンヘルス(動物の健康=自然の健康=人の健康)の考え方は次なる感染症抑制のために重要です。それぞれが健康でないと全体として健全に存続できません。

 

生物多様性の喪失

 過去50年で、野生動物の個体数は68%も減少しました。

 その生物多様性の喪失の60%が「私たちの食」が原因で起こったと言われています。地球の陸上の哺乳類の中で、野生動物の割合は、陸上の哺乳類のたった4%です。逆に私たちが増やしすぎた家畜動物はの60%も占めています(36%の人間が家畜動物を食す理不尽な世界)。

 私たちの生活や地球の安定した気候は、生物多様性に支えられています。これ以上の生物多様性破壊は本当に危険です。

 

植物食を選択する

 地球温暖化を1.5度までに抑えるには、現在の肉や乳製品の消費を、2013年度の消費量と比べて、世界平均で半分以下にする必要があります。

 突き詰めると、老化と病気の原因はほぼ動物性食品と有害な添加物だと言っても過言ではない。すべての食事を一気に植物性食品に切り替えることが難しくても、まずは、ミートフリーマンデー(月曜日だけ菜食にしてみる)など、できるところからはじめてみませんか?

 

 

革命は目の前のお皿の上から実現できる

  

 

Radha Chihiro
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