人は一生をかけて、自分のペルソナを修正して生きていく。子どもは無条件の幸福の中に居るわけではなく、実はかなり初期からペルソナを作り、そのペルソナと自己との矛盾に葛藤し、古いペルソナを脱ぎ捨て新たなペルソナをかぶるということを繰り返す。そのペルソナを青年期以降捨て始め、その過程で自己統一した自分に近づいていく。この仮説は、トランスパーソナル心理学の諸理論に結びつく。
中年期、人はミッドライフ・クライシス(いわゆる中年の危機)と呼ばれる時期を迎える。それまで、自分だけ → 家族 → 学校 → 社会、というように、発達は外に向かっていた(外化)。しかし、多くの人は、30 代後半 ~ 50 代のいずれかの時期に、これまで身につけてきた「家族ペルソナ」「学校ペルソナ」「社会ペルソナ」「親ペルソナ」などがいずれも代用満足であることに気づきはじめる。内化のプロセス(自己探求)が始まるのだ。
これまで外化でつけてきた仮面を静かに剥がし続け、非自我極への再会 ― 混乱 ― 統合。真っ裸の自己を見つめ、深く、静かに、己の内面と向き合う。自分の人生、このままでいいのか。いったい自分は何のために生まれて、何のために生きるのか。何が好きなのか、一生をかけて成し遂げたいことは何なのか──。そしてとてつもないシンクロニシティと出逢う。
4 つの精神構造と第 3 の目
トランスパーソナルの大御所・吉福伸逸は、人間の精神的構造を以下の 4 つに分類している。
・Power of Brain (あたまの力:考える力)
・Power of Emotion (情緒・情動の力:感情や感覚の力)
・Power of Being (存在の力:その人の存在そのものが持つ力)
・Power of Becoming (関係性:他者との関係によって生じる力)
生まれた直後には、ほとんど「 Power of Brain 」と「 Power of Emotion 」しかないのだが、他者の存在により「 Power of Becoming 」が育っていくと同時に、「 Power of Being 」により物事を論理的に見ていこうとし始める。
「 Power of Being 」は、アイデンティティが破壊され再構築されることによって強くなる。そして、そこから、自らの精神力動を俯瞰的に見つめる「第 3 の目」、すなわち、「 Power of Being 」の中にありながら、「 Power of Brain 」、「 Power of Emotion 」、「 Power of Becoming 」を静かに見つめる存在が育っていく。
「第 3 の目」は、自分を「 Authentic 」に見つめる目である。青年期以降の発達において、健全な「第 3 の目」の存在が必要不可欠である。今実感するのは、「 Power of Being 」を高めるためには、ペルソナを外す、という経験が必要不可欠であるということ。そして脱同一化のプロセスそのものがトランスパーソナル(自己超越)の内面をあわせ持つということである。
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人は絶望によって目覚める
太陽は、予測しなかった正午の絶頂に達する。
カール・グスタフ・ユング
予測しなかったというのは、
その一度限りの個人的存在にとって、
その南中点を前もって知ることができないからである。
正午12時に下降が始まる。
しかも、この下降は午前すべての価値と理想の転倒である。
太陽は、矛盾に陥る。
人生の午後は予期せぬ時に訪れる。
しかし、最初のうちは、
それまでの心理と価値観が正しいと信じている。
だが、人生の朝と午後ではプログラムが異なる。
人生の朝に輝いていたものは午後に輝きを失い、
人生の朝の真実は、午後に偽りとなる。
絶望した人は何も持っていない。
自分で何をどうしたらいいのかもわからず
初めて自分で何かをするということを手放す。
この世界の秩序とルールを超えたものを
受け入れる準備が整う。
そこに流れ込んでくるものは、
見たことも聞いたこともないもの
到底信じられないものであっても
ずっと待っていたものだとすぐにわかる。
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自分の経験はすでに
真実を教えてくれていたと理解するとき
奇跡は始まっていく
The miracle begins when you can see
that your experience has already
taught you the truth.