「塩」の質と摂取量

 

塩の過剰摂取による体の反応

  1. 塩を摂り過ぎると、血液中のナトリウムの濃度が上昇する。この情報はすぐに脳の中枢神経に働いてのどが渇き、水分を補給するように指令を出す。また、尿量を減らそうとする。このようにして体内の水分量を増やし、血液中のナトリウムの濃度を元に戻そうとする。体内の水分量が多くなると、1分間に心臓から全身に送り出される血液の量も増えて、血圧が上がる。単に水を飲んでも時間とともに尿に出てしまうので、体内の水分量は増えない。体内の水分量が増えるのは、塩分が大きな影響を与えている。
  2. 塩の過剰摂取は、高血圧、心血管疾患、腎カルシウム結石、骨粗鬆症のリスクを高める。また慢性腎臓病にも悪影響を与える。
  3. ナトリウム濃度が高いと、血管の内皮細胞を硬くし、一酸化窒素合成の活性が低下し、脂肪プラークの蓄積など血管への悪影響を助長する。さらに活性酸素種(スーパーオキシドなど)を産生し、体の酸化による慢性疾患につながる可能性がある。長期的には心臓だけでなく、腎臓や脳の損傷、胃がん、食道がんとの関連性が報告されている。
  4. 食事で塩を摂り過ぎると、直ちに血管の拡張に悪影響を与え、動脈機能が大幅に低下する。人類は進化の過程で、少ない塩分でも生命が維持できる仕組みを獲得してきた。そのため現代のように自由に塩分を摂取すると体内にたまって、様々な病的トラブルをもたらす。特に日本人は塩分の摂り過ぎが指摘されている。

減塩の効果

  1. 減塩すると血圧が下がり、心臓病のリスクを低減させる。
  2. 食事に塩をほとんど、または全く加えないと報告した人は、食事に塩を加えている人たちよりも心臓病のリスクが低いことが判明している。また、食事に塩を加えない民族は、子どもの血圧と70歳の人の血圧は同じ。つまり生涯、高血圧症にはならない。
  3. 「Nutrients」の論文(2021)では、人生の初期段階での塩分摂取量が、血圧にプログラミング(生物学的に定められた行動型)される可能性があることを示唆している。大人になって心血管疾患が発生するかどうかの根底にあるのは、小児期の非常に速い時期に始まり、塩の過剰摂取は動脈性高血圧や肥満などの危険因子に関与していると結論づけている。

ナトリウムから食塩量に換算する計算式

ナトリウム(mg)×2.54÷1,000=食塩相当量(g)

たとえば購入したもののナトリウム表示が1,500mgの場合
 1,500mg×2.54÷1,000=3.81g
 ∴塩分約3.8g

海外の学者の見解

  • 摂取ナトリウムの数値(mg)が一日の総摂取カロリー数を超えてはならない。
  • 上記ルールを支持。ただしこの量は50歳未満の健康な大人の上限値。高齢者、喫煙者、また生活習慣病の予防や改善には、もっと少ない量に制限するべし。
  • 高ナトリウムは血管を収縮させるホルモンを刺激し、血圧も上昇させる→時間が経つと、高血圧により心臓に負担がかかり、左心室があつくなり、心不全のリスクが高くなる(キャサリン・サクマー博士/ハーバード大学医学部助教授)
  • ナトリウム量が 12g から 3g まで減少すると、心血管疾患のリスクは直線的に低下するが、3g 未満にしてもリスクが低下するというデータはない。ナトリウム摂取量には個人差があり、運動によって汗をかく人は、より多くのナトリウムの摂取量を必要とする。実際ナトリウムの欠乏は深刻な健康上の影響を受ける可能性があるため、1日 1.5g 程度を推奨(コリン・キャンベル博士)
  • プラントベースの食事は西洋型の食事に比べると、血管を脂肪プラークで厚くすることが少ない傾向があるので、血圧が高いと出血性の脳卒中を起こす可能性がある。一方、西洋型の食事を摂っている人たちは虚血性脳卒中(脳梗塞)に注意が必要(ファーマン博士)
  • 近年ほとんどの研究がナトリウムの過剰摂取による健康被害を示している。

真弓先生の見解

高血圧は悪くなく日本人はもともと血圧が高めの民族。塩を悪者にしているが塩が悪いのではなく精製塩こそが問題。本物の塩は微小ミネラルを含有し日本人には必要。

WHOのガイドライン

ナトリウムの最低限必要な量は200-500mg(塩分0.5-1.27g)

ナチュラル・ハイジーン

  • SOS-FREE (No sugar, oil, and salt)
  • 砂糖、オイル、塩は不使用(多くの科学的根拠がある)
  • 塩は多くても2g以下。
  • 人体が本当に求めている塩分は、岩塩や海塩を含む食卓の食塩(塩化ナトリウム)ではなく、野菜や果物に含まれる植物のナトリウム(有機ミネラル)です。塩分は野菜や果物から摂り、卓上の塩はできるだけ控えめに。

ゲルソン療法・ケイシー療法

  • 「塩を徹底的に抜く」ゲルソン療法の生みの親マックス・ゲルソン氏の亡き後は、息子のシャーロッテ・ゲルソンさんがゲルソン療法を伝えてきたが、彼はケイシー療法の第一人者。
  • エドガー・ケイシー は「野菜自体がもっている塩分で調理せよ」、「鉄、ナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ケイ素。これらは、水分の多い果物や葉状で水分の多い野菜に大量に含まれる(有機ミネラル)」、「野菜を調理するときは、水を加えてスープを作るのではなく、野菜自身が保持している水分だけで調理したものを食べるように」と言及。
     
    ※ナチュラル・ハイジーンはこれらの療法と相似性がある

 

 

アーユルヴェーダ

 塩は、世界中で何世紀にもわたって使われてきました。最も古くからある調味料で、料理の要とも言えます。数千年前から塩が薬として使われてきたと聞くと、あなたは驚くかもしれませんが、塩は消化を促したり、滞りを解消したりする、ヒングヴァシタカ(hingvastak)のような、いくつかのアーユルヴェーダの処方の鍵になる材料でもあります。

 このミネラルからは多くの恩恵があるにもかかわらず、現在の医学のシステムの中で塩は問題視されたり、悪者扱いされてきました。しかし、塩を排除したり、極端に少なくしたりすることは、大きな影響をもたらすことになります。

 ホリスティックな(総体的な)視点から見れば、塩自体には問題がないことは簡単に理解できます。塩の使いすぎ、使い方の間違い、高度に精製されたもの(一般に食卓塩と呼ばれる精製塩)を使ったときに、健康上の問題が発生するのです。自然からの贈り物である塩を適量に使うことで、多大な効果があることがわかるでしょう。

塩の種類について

 すべての塩が同じというわけではありません。私たちの祖先が塩だと認識していたものは、現在私たちが普通に使っているものとは大きく異なります。かつては海や古代に海底だったところから自然に採取されていた成分でしたが、今では多くの場合、塩は料理というよりも産業としての使用に適すように高度に精製されています。食卓塩の人気とは裏腹に、自然食品店にはたくさんの天然塩が並んでいます。

 食卓塩(テーブルソルト)は高度に精製された食品です。これは精製されることで、天然の塩に比べるとかなり高いナトリウムの含有率になっています(塩化ナトリウム99.85%)。精製過程で使用される化学物質に加え、食卓塩には添加物も含まれています。固化防止剤、アルミニウム、フッ化物、ヨウ素、およびこれらの添加物を安定させるためのその他の化学物質が含まれることがあります。これらの添加物はパッケージに表示されていませんが、その存在により、食塩に含まれる有害物質が生成されます。添加物の存在は体の中に アーマama(毒)を作り出します。高い塩化ナトリウムの含有率によって、食卓塩は最も味が濃く、すべての塩のタイプの中で一番熱を作り出します。

 海塩(シーソルト)は、2 通りの作り方があります。一つの方法は、シンプルに海水を天日干しして作ります。この方法は、世界中で何世紀にも渡って使われていて、様々なサイズや形の小さな結晶となります。海水の味を含み、日常使いにおすすめです。あまり望ましいとは言えない方法で、脱塩と呼ばれる方法です。脱塩は主に産業用途のためや飲み水を作り出すために海水から塩を取り除く工程です。この過程では多くの化学物質を使います。その結果としてこの塩の純度は高くありません。海塩を買う場合には、自然な方法で採取された塩を選ぶようにしましょう。

 ミネラル塩(もしくはミネラル塩)は、数千年の間に乾燥した古代海底だったところから採取されます。ミネラル塩は山から採取され(最も人気があるもののひとつにヒマラヤのピンクミネラル塩があります)、自然のプロセスで洗浄、乾燥されています。ミネラル塩の大きな恩恵のひとつは、微量ミネラルを含んでいることです。人々は歴史的に肥沃な土地で育てられた食べ物からこの微量ミネラルを摂取していました。しかしながら、現在では酷使された土地で商業的に育てられることが多いのが現状です。この理由を考えても、ミネラル塩は料理にも、過剰な粘液をクリアにし呼吸の健康をサポートするネティの実践にも、好ましい選択肢となります。

ミネラル塩や海塩からの恩恵

 アーユルヴェーダで、塩は、特に ヴァータ・ドーシャがバランスを崩しているときには特に、薬として使われてきました。塩は、火と水の要素で作られていて、少量で体内の水分量を調整し、食べ物からの栄養素の吸収を促進し、血圧を整え、脳や神経系の機能を活性化します。しかしながら、多く摂りすぎると カパを乱し(浮腫など)、高血圧や腎障害、骨粗鬆症やその他の問題を引き起こします。

 塩は料理の味方として最もよく知られています。料理で使うと風味を際立たせ、食べ物を柔らかくして体内への吸収をよくします。しかし、塩が台所の主要な地位を確保しているもう一つの理由は、消化酵素を活性化させるからなのです。

バランスと健康を考えた塩の使い方

 塩の良いところは、食べ物の味を良くしてくれるところです。しかし、だからこそ、感覚が優位に立つと塩が多用されてしまうのも事実です。塩は他のすべての材料の味を引き立てます。大切なのは、適度な量を使うことと、料理に混ぜ込むことです。

 適量の塩を使うことで、食材に含まれる他の味と調和させることができます。塩の使いすぎは、料理の味が塩辛くなることで分かります。一人当たり小さじ⅛以下で十分です。この程度の塩分であれば、すべての食材の味が際立つ料理になります。

 調理に塩を使うことが、味を良くする能力を引き出すための鍵になります。食卓に塩が置いてあるのをよく見かけますが、調理後に塩をかけるのは(たとえミネラル塩でも)体には負担が大きいのです。塩はかなり温める性質なので、このように食べると、その影響を受け、 ピッタのバランスを崩してしまいます。さらに、調理後に塩をかけると、味蕾が麻痺してしまいます。塩を料理中に入れることで、料理の微細な味を引き出すことができますが、食卓で塩をかけると、その逆になってしまいます。

 

 

当方の見解

 カリウムやナトリウム、マグネシウムといった電解質は、腎臓から心機能における全ての調節に役立っています。電解質のバランスは、 海水とヒトの体液(組織液)とほぼ同じです。水を飲み過ぎると体液が薄まり、電解質の不足により機能不全に陥ります(すべての野菜や果物には、電解質が豊富に含まれています。とくにセロリ、オリーブ、海藻、トマトなどは塩化物が多い)。

 水に対して、海水からできた純粋な塩に含まれているミネラルが入っていないと、ヒトの体はどんどん弱くなります。体内の細胞が浸っている体液(組織液)の塩分濃度は 0.9% です。過剰摂取も極端な減塩もいけません。0.9% でなければ細胞は生きられない。これは少し長い断食(ウォーター・オンリー・ファスティング)を経験したとき痛感しました。断食 6 日目、海塩を少し舐めただけで体中の細胞が反応したのです。

 私はナチュラル・ハイジーンとアーユルヴェーダを重視した ローフード(ローヴィーガン)中心の食事であり、発酵マニアです。味噌汁、ネギ納豆(醤油麹を少し加える)、ローフード料理に白味噌などを用います。よって調味料として本物の塩を摂っています。ケイシー療法の「鉄、ナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ケイ素。これらは、水分の多い果物や葉状で水分の多い野菜に大量に含まれる(有機ミネラル)」という見解曰く、必要なものはプラントの中にすでに在る。総じて「塩」は質と分量、そして加えるタイミングが大切です。

追記
 書きながら思いました。あなた自身のカラダの声を聴いて。それが最も適切なサイン。それが一番大事。よく考えると、私も感覚で食す。たとえば塩分を多く摂取してしまった翌日は顔が浮腫んだことを思いだす。理論を述べるより口に入れた瞬間の食感や体調の変化で分かる。しかし塩は過度に摂りすぎない方が賢明なことは確かです。

 

Radha Chihiro
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